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今週の1冊(編集用)
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今週の1冊4

 

 

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■ 54字の物語


氏田 雄介(PHP研究所)1,080円

 

 

9かける6の原稿用紙に
54字の物語。

世界一短いかもいれない短編小説集です。

何気ない言葉が
よくよく考えるととんでもないことに。

毒とユーモアの効いた
作品たちに
笑みが浮かぶことでしょう。

俳句や
短歌もそうですが、
日本語とは
限られた制約の中でも、
無限の表現を生み出せるのでしょう。

こういう作品が出るたびに、
本の可能性は
まだまだ
あるに違いないと確信します。

そんな難しいことはさておき。

年齢を問わずに
さらりと読める作品です。

表紙にピンときたら
ぜひご一読ください。

 

 

■ ギガタウン 漫符図譜


こうの 史代(朝日新聞出版)907円

 

 

どこかまんがちっくな
国宝の鳥獣戯画。

それをモチーフとして
まんがの表現の
漫符を解説した4コマまんがです。

機嫌のいいことをあらわす
♪や、
困ったときの
水滴のマークなど。

こうやって
あらためて見ると、
世の中の表現に
まんがの影響というのは
とっても大きいものですね。


もちろん
解説などと肩肘をはらなくても。

うさぎの女の子を中心とした
日常生活を描いた漫画は
ノスタルジックで
チャーミング。

まんが好きはもちろん。

昔、まんが好きだったあなたに。

懐かしさを届ける作品です。

 

 

■ かがみの孤城


辻村 深月(ポプラ社)1,944円

 

 

今年も発表されました本屋大賞。

この時期になると
やっぱり受賞作が気になります。


学校での居場所をなくしたこころ。

部屋に閉じこもっていると
突然、鏡が光り始めた。

鏡をくぐり抜けた先には
似た境遇の7人の少年少女。

願いを叶えるために、
彼らは鍵を探すのだが・・・?


まるで
学校とは城のようなもの。

その中でなじめば、
学生として城壁の中で守られる。

だが、
そこから弾かれると
城壁によって戻れなくなる。

世界の中の小さな共同体。

タイトルからなんとなくそんなことを
連想してしまいました。


謎が解かれるだけでなく、
その先へ続いていくラストが見事です。

閉塞感を感じるすべての人に、
希望へつながる出会いのあらんことを。

 

 

■ オリジン(上)(下)


ダン・ブラウン(KADOKAWA)各1,944円

 

 

映画化された
「ダヴィンチ・コード」や「天使と悪魔」など、
宗教象徴学者ラングドンの
シリーズ最新作です。

今回のテーマは

「われわれはどこから来て、
どこへいくのか?」

この問題を解き明かしたと
発表したラングドンの元教え子。
発表直前、
彼は命を落とします。

スペインを舞台に、
ラングドンが美術館館長と
教え子の残した人工知能とともに、
事件の謎に迫ります。

歴史と人工知能は
相反するように思えますが、
歴史上の研究や学問は
当時の知識の最前線。

現代の最新研究で、
当時の研究の最高峰に挑みます。

人間の知識の積み重ねは
どこまで続いていくのか?

この本の表紙は
いまだ完成しない
サグラダ・ファミリア。

まるで
人間の探究心の象徴のようです。

 

 

■ スイート・ホーム


原田 マハ(ポプラ社)1,620円

 

 

梅田から山手への電車に乗り、
高台の街にある小さな洋菓子店。

そこで
繰り広げられる家族の物語です。


中心になる
洋菓子店の家族が
仲が良く、一人ひとりが魅力的です。

また
登場するケーキがおいしそうで、
ケーキが食べたくなって仕方ありません。


家族のあたたかさと
ケーキのほどよい甘さ。

刺激的ではないけれども
どちらも
自分をあたたかく包み込んでくれるようです。

家族の幸福と
ケーキの口福。

両方が
味わえるおいしい作品集です。

 

 

■ おじさまと猫①


桜井 海(スクウェア・エニックス)880円

 

 

書評で取り上げられて今人気のコミックス。

ネコもの流行だなと
軽く読んでみてノックアウトされました。


ペットハウスで売れ残っていた
一匹の成猫。

あきらめていた猫の前にあらわれた
初老の紳士。

「私が欲しくなったのです」


ガラスケースであきらめきっていた猫と、
一人暮らしの初老の紳士。

遠慮がちに距離をつめていく様子が
切なくていじらしいです。

猫だけでなく、
紳士も悲しい過去を背負っているようで、
この先の展開が気になります。


ペットショップに並ぶたくさんの子猫たち。
大きくなるのはあっという間。
成猫は売れにくいという現実。
どの子猫たちにも
幸せな出会いがあることを祈ります。

 

 

■ 春の旅人


村山早紀・げみ(立東舎)1,296円

 

 

村山早紀の小説に
そっとよりそうげみのイラスト。

花を題材にした
「花ゲリラの夜」

夜の遊園地が舞台の
「春の旅人」

色鮮やかなドロップ缶の
「ドロップロップ」

この季節にふさわしい
あたたかなおはなしです。

フルカラーのイラストが
たくさん収録され、
またページの余白も
イラストで飾られています。

絵本でも小説でもなく
イラストと小説が
一冊の作品となっています。

本を読むのが苦手な人も
楽しく読みやすくなっています。

プレゼントにもおすすめの一冊です。

 

 

■ ここは、おしまいの地


こだま(太田出版)1,296円

 

 

あまりにも衝撃的なタイトルの
実話を基にした私小説で
デビューした著者の
自伝的エッセイです。

ちなみに
前作のタイトルは
ちょっとここでは書けませんので、
ネットでお調べください。


ヤンキーと百姓が
九割を占める集落で育った著者。

周りの大人たちも、
世間とは
少しずれてしまった人たち。

そんな環境で
著者が経験したことたちは
ひどかったり、悲しかったり。

それでも
著者の語り口がおかしくて
笑ってしまいます。


つらいことも
きっと時間が経てば笑える日が来る。

そう思えるかもしれない一冊です。

 

 

■ おまじない


西 加奈子(筑摩書房)1,404円

 

 

文学好き芸人がおすすめして、
テレビなどで取り上げられた
西加奈子の新刊です。

最近は
長編が多かったのですが、
10年ぶりの短編集です。


さまざまな人生の転機に、
思い悩む女子たち。
その背中を
言葉はそっと押してくれる。


何気ない日常で
ふと引っかかる何かを
すくいあげて
物語にする。

それが
この作者の巧みさでしょう。

まるでトゲのように、
言葉は
読者の心に
じわじわと
残り続ける。

目を向けずしまいこんだ
心に気づかせてくれます。

 

 

■ 彼方の友へ


伊吹 有喜(実業之日本社)1,836円

 

 

今回の直木賞候補作。


老人施設で暮らす
老女の元に届けられた黒い紙箱。

中身は
色とりどりの花のカード。

「フローラ・ゲーム」

それは
彼女にとって
大切な思い出だった・・・。

記憶は
戦中の東京へ。

少女雑誌「乙女の友」に憧れた彼女は、
その雑誌社で働くことになります。

夢を叶えた彼女ですが、
戦争は容赦なく
悲惨な現実を突きつけ、
日々も切実な境遇へ追い詰められます。

やがて時は過ぎ、
戦争は終わっても、
失くしたものはあまりに多く、
悲しみも消え去りはしません。

そんな境遇でも、
どんな悲しみの中でも。

それでも

あきらめなかった
人たちの姿は魅力的です。

 

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